Wacom Oneを使っていると専用ケーブルの取り回しに悩んだり断線してしまったりして代用品を探したくなることがありますよね。純正品は高いし手軽なUSB Type-Cケーブルや延長コードでどうにかできないかと考えるのは当然のことです。しかし安易に非純正の互換ケーブルを使用すると大切な液タブ本体を故障させてしまうリスクも潜んでいます。この記事では長年工具やガジェットを見てきた私の視点からWacom Oneのケーブル代用に関する正しい知識と安全な対処法について解説します。
記事のポイント
- 純正ケーブルと市販のUSB Type-Cケーブルの決定的な違い
- 安価な互換ケーブルや延長アダプタを使用するリスク
- Wacom Oneのモデルによる接続方法の違いと注意点
- ケーブルが故障または長さが足りない場合の具体的な解決策
Wacom Oneのケーブル代用と互換性の基礎知識

「たかがケーブル、されどケーブル」。バイヤーとして数多くのガジェットを扱ってきた経験から言わせてもらうと、独自規格のコネクタを採用しているデバイスほど、代用品選びには慎重になるべきです。まずは、なぜWacom Oneのケーブル代用が難しいのか、その構造的な理由とリスクについて解説していきましょう。
USB Type-Cで代用する際の注意点
Wacom Oneの本体側ポートは、一見すると汎用的なUSB Type-Cと同じ形状をしています。そのため、「スマホ用の充電ケーブルや、100均のType-Cケーブルでも代用できるのでは?」と考えがちですが、ここには大きな落とし穴があります。
初代Wacom One(DTC133)の場合、ポートの形状こそType-Cですが、内部の配線仕様はワコム独自の規格になっています。一般的なUSB Type-Cケーブルはデータ通信や給電を行いますが、Wacom Oneが必要とする映像信号(HDMI)の伝送に対応していないものがほとんどです。
形が同じだからといって挿せるとは限りません。特に初代モデルは、映像信号、USBデータ、電源を1本にまとめた特殊な信号処理を行っているため、市販の標準的なUSB-Cケーブルでは基本的に動作しません。
純正以外のケーブルを使う危険性
サードパーティ製の互換ケーブルや、形状を無理やり合わせた代用品を使用することには、想像以上のリスクが伴います。私が特に懸念するのは、「本体側の端子破損」です。
純正品以外のケーブルは、コネクタの寸法精度が甘いことが多々あります。微妙にサイズが合わないプラグを無理に押し込むことで、本体側の端子(メス側)を物理的に広げてしまったり、中のピンを折ってしまったりする事例を何度も見てきました。
一度本体側の端子が破損すると、ケーブルを買い替えても二度と映らなくなります。さらに、非純正品の使用による故障はメーカー保証の対象外になる可能性が極めて高いです。数千円をケチった結果、数万円の本体をダメにしてしまっては本末転倒です。
旧型と新型で異なるケーブル仕様
Wacom Oneには、2020年発売の「初代(gen.1 DTC133)」と、2023年以降に登場した「新型(Wacom One 12 / 13 touch)」が存在し、それぞれケーブルの仕様が全く異なります。ここを混同すると、間違ったケーブルを買ってしまうので注意が必要です。
| モデル | ケーブル仕様 | USB-C 1本接続 |
|---|---|---|
| Wacom One gen.1 (DTC133) | 専用X型ケーブル (HDMI + USB-A + 電源) | 不可 |
| Wacom One 12 / 13 touch | USB-C to C ケーブル (または3in1) | 可能 (条件あり) |
新型であれば、映像出力対応(DisplayPort Alt Mode対応)の汎用USB-Cケーブルで動作する可能性がありますが、初代モデルは基本的に専用の「X型ケーブル(3in1ケーブル)」が必須です。
HDMI変換で映像が出ないトラブル
「PCにHDMIポートがないから」という理由で、HDMIをUSB変換アダプタ経由で接続しようとする方が多いですが、これもトラブルの温床です。
安価な変換アダプタは、映像信号の帯域不足や相性問題で「No Signal」となるケースが非常に多いです。特に、Wacom Oneのようなペンタブレットは、単に映像を映すだけでなく、ペン入力の信号(USB)も同時にやり取りする必要があります。複雑な変換を噛ませれば噛ませるほど、動作は不安定になります。
端子形状が合わず差し込めない問題
初代Wacom Oneの本体側差込口は、かなり奥まった場所にあり、しかも開口部が狭く設計されています。純正ケーブルのコネクタは、この形状に合わせてL字型かつスリムに作られています。
一方で、市販のUSB-Cケーブルや延長アダプタの多くは、コネクタ部分の持ち手(ハウジング)が太く作られています。そのため、物理的に奥まで刺さらず、カチッという感触がないまま接触不良を起こすことがよくあります。「カッターで削れば入る」という荒技を紹介しているブログも見かけますが、削りカスの混入や絶縁不良によるショートのリスクがあるため、元職人としては絶対に推奨できません。
Wacom Oneのケーブル代用や延長の具体策

リスクを理解した上でも、「どうしてもケーブルが届かない」「緊急で代わりが必要」という場面はあるでしょう。ここでは、比較的安全に運用できる延長方法や、故障時の現実的な対応策について、私の経験を交えて紹介します。
短いケーブルを延長する方法と工夫
Wacom Oneの純正ケーブルは長さが約1.8mほどですが、デスク環境によっては足りないことがあります。この場合、最も安全なのは「本体側ではなく、PC接続側を延長する」ことです。
特殊な本体接続コネクタをいじるのではなく、PCに繋がる「HDMI端子」「USB-A端子」「電源用USB端子」のそれぞれを、市販の高品質な延長ケーブルで伸ばすのがセオリーです。
- HDMI延長: 信号劣化の少ないハイスピード対応ケーブルを選ぶ。
- USB延長: 通信品質の良いUSB3.0以上の延長ケーブルを選ぶ。
PC側のポートが足りない、または遠い場合は、AC電源付きのセルフパワー対応USBハブや、ドッキングステーションをデスク上に配置し、そこにWacom Oneを接続することで、擬似的にケーブルを延長する効果が得られます。
断線や故障時の修理費用と対応
もしケーブルの接触不良ではなく、本体側の端子を壊してしまった場合、修理費用は高額になります。ワコムの修理規定や一般的な相場を考慮すると、端子交換を含む基板修理になった場合、最大で36,300円程度の費用がかかる可能性があります。
これはWacom One本体の中古が買えてしまうレベルの金額です。簡易的な修理で済む場合でも数千円はかかりますし、修理期間中は作業が止まってしまいます。この「修理リスク」というコストを考えると、やはり無理な代用よりも純正ケーブルへの投資が最も安上がりだと言えます。
Amazonやメルカリでの購入価格
純正ケーブル(ACK44506Z)は、ワコムストアで4,180円(税込)で販売されています。決して安くはありませんが、安心代と考えれば妥当なラインです。
少しでも安く手に入れたい場合、メルカリやヤフオクなどの中古市場をチェックするのも一つの手です。
- 新品未開封: 3,500円~4,000円前後
- 中古良品: 2,500円~3,000円前後
ただし、中古品の場合は「断線しかかっている」可能性もゼロではありません。出品者の評価や商品説明をしっかり確認し、「動作確認済み」の記載があるものを選びましょう。
ケーブル以外で使える安全な互換品
ケーブルに関しては純正一択を強く推奨しますが、他の消耗品については互換品でも十分に実用的なものがたくさんあります。私が実際に試して「これは使える」と感じたものをご紹介します。
- 替え芯: セラミックハイブリッド芯やステンレス芯など、書き味を変えるサードパーティ製品は魅力的です。ただし、ペン先が硬すぎると画面を傷つけるので保護フィルムとセットで。
- 保護フィルム: ペーパーライクフィルムなどは、純正にはない描き心地を提供してくれます。これは積極的に試して良いジャンルです。
ケーブル不要な新モデルへの買い替え
もし現在使用しているWacom One(gen.1)が頻繁に接続不良を起こすなら、いっそ新型のWacom One 12 / 13 touchへの買い替えを検討するのも賢い選択です。
新型モデルは、USB Type-Cケーブル1本での接続に正式対応しています(PC側がDisplayPort Alt Modeに対応している必要があります)。特殊な3in1ケーブルの呪縛から解放され、市販の高品質なUSB-Cケーブル(映像出力対応)を使えるようになるため、ケーブルトラブルのストレスが激減します。
Wacom Oneのケーブル代用は慎重に判断を
結論として、Wacom One(特に旧型)のケーブル代用は、「PC側の端子で延長するならOK、本体側のケーブルを代用・加工するのはNG」というのが私の見解です。
4,000円の純正ケーブルを渋って、数万円の本体を壊してしまっては元も子もありません。現場で多くの機材トラブルを見てきましたが、専用設計された部分には、それなりの理由とコストが掛かっています。長く快適に創作活動を続けるためにも、電源周りと主要な接続ケーブルには、信頼できる純正品を使用することを強くおすすめします。
※本記事の情報は執筆時点のものです。製品の仕様変更や価格変動がある場合がありますので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
まとめ:Wacom Oneのケーブル代用はリスクとコストを天秤にかけて
今回はWacom Oneのケーブル事情について、少し厳しい現実もお伝えしました。しかし、クリエイターにとって道具は相棒です。正しい知識でメンテナンスを行い、長く大切に使ってあげてください。

